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吉井 文男; 幕内 恵三
JAERI-Conf 95-003, p.584 - 587, 1995/03
尿素は種々の有機化合物(ゲスト分子)を六方晶系のカナル内に取込んだ包接化合物を形成することが知られている。このカナル径は5~6のため、限られたゲスト分子しか包接できない。しかし、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)モノマーとの共存下で尿素と包接化合物をつくると、本来単独では尿素と包接化合物を形成しないものが、尿素カナルに取込むことができることが分った。この手法により香料や忌避剤をHDDAによりカナル内に取込み、照射を行うと、重合したHDDAの間にそれらが揮発することなく安定に包接できることが分った。
吉井 文男; 幕内 恵三
Macromolecular Reports, A30(SUPPL.1-2), p.127 - 135, 1993/00
従来尿素と包接化合物をつくる物質は尿素がつくるカナルの径が5であるためにごく限られたものしか包接化合物をつくらなかった。しかし、我々の研究において、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)が介在するとこれまで尿素と包接化合物をつくらない物質がHDDAによりカナル内に引入れられる。これを誘引剤、忌避剤、防殺虫剤を包接して尿素カナルから徐々に放出するか、また完全に封じこめるために、モデル化合物としてリーフアルコール(葉っぱの匂い)、(LEA)を使いHDDAとの包接化合物の熱安定性やカナル内からの放出性を調べた。熱安定性はLEAのOH基とカナルとの水素結合による相互作用によりHDDA単独よりも安定になる。LEA尿素混合物は15日で全部が揮発し、未照射カナルからは75日で揮散した。照射カナルは初期に揮発するが、その後は40%が重合したHDDAオリゴマーの間に包接される。その線量は30kGyである。
吉井 文男; 幕内 恵三
材料技術, 10(9), p.280 - 288, 1992/00
ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)は、単独では尿素と包接化合物をつくらないモノマーを包接化合物内に引入れ、そのモノマーとHDDAの2成分をゲスト分子とする尿素包接化合物をつくる。HDDAが種々のモノマーを引入れた包接化合物の共重合反応では、得られる共重合体の組成が、照射前の仕込みの組成と同じである。さらに、HDDAは香料や忌避剤を引入れた粉末状の尿素包接化合物をつくり、照射により、HDDAのオリゴマーの間に包接できる。この香料や忌避剤は、照射線量の調節により包接化合物中から徐々に放出でき、また完全に閉込めることができる。以上の引込み効果を、放射線共重合反応や徐放性粉体の調製に応用した結果を総説としてまとめた。
皆川 雅朋*; 宮野 和幸*; 森田 悌介*; 吉井 文男
Macromolecules, 22(5), p.2054 - 2058, 1989/00
被引用回数:22 パーセンタイル:72.35(Polymer Science)放射線照射による尿素包接重合法では、立体規則性に富んだポリアクリロニトリル(PAN)が得られる。この立体規則性PANのジメチルホルムアミド(DMF)への溶解挙動をレーザー光源を用いた濁度測定装置によって調べた。溶解温度(Tsol)は濁度が消失し、完全に透明な均一溶液が得られる温度として定義した。種々のタイプのPANのTsolは、分子パラメータの関数でまとめると、Tsolの値は立体規則性にのみ規定され、分子量による影響は比較的小さく、Tsolと立体規則性との間に定量的関係が見出された。さらに、温度を上げた時の溶解挙動の機構を熱力学的立場から考察した。
桜井 勉; 高橋 昭; 藤沢 銀治; 横山 淳
日本原子力学会誌, 24(10), p.775 - 782, 1982/00
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Nuclear Science & Technology)クリプトン固定化技術として世界各国で開発が進められている、(i)イオンインプランテーション/スパッタリング法、(ii)ゼオライト包蔵法、(iii)包接化合物法、及び当研究室で開発を始めた(iv)化学的固定化法、について開発の現状を紹介した。いずれの方法も、基礎研究の段階、又はそれを終了したところであり、実用化に向けて一層の発展が期待される。
吉井 文男; 嘉悦 勲
高分子論文集, 36(1), p.61 - 63, 1979/01
被引用回数:0長鎖モノマーの尿素包接化合物に線を照射した後、種々の溶媒を添加して溶解処理を行うことによっておきる後効果重合について検討した。その結果、常温(25C)においても比較的粘度の高い溶媒を添加した場合は、冷却したメタノールを添加した場合よりも著しく後効果重合が起こり、重合率は100%近くに達した。これは粘度の高い溶媒の中で、カナルを構成する尿素が徐々に溶解するとともに解放されたモノマーの重合が起こるためである。そしてこの高い重合率は溶媒の粘度が高いために停止反応がおこりにくく成長ラジカルの寿命が長くなるためと考えられる。
吉井 文男; 渡辺 祐平; 嘉悦 勲
Eur.Polym.J., 15(4), p.323 - 324, 1979/00
被引用回数:3一連のガラス化性モノマーの重合反応の研究の際にアクリレートモノマーの重合の開始および成長ラジカルの同定が必要になってきたが、バルクだとラジカルが不安定なために同定がむずかしかった。そこですでに長鎖モノマーであるヘキサンジオールジアクリレートが尿素と包接化合物をつくり、後効果重合することを見出していたので、これを使って、後効果重合と関連ずけて、アクリレートラジカルの同定を行った。25Cの照射で水素付加型のESRスペクトルの分離のよい5本線の開始ラジカルがみつかり、それは、70Cに昇温したときに3本線の成長ラジカルに変わった。ラジカル濃度の温度依存性は、包接化合物の分解温度(90C)では速やかに減少するが、それ以下の温度ではきわめて長い時間成長ラジカルが観察され、尿素カナルの壁の保護効果がきわめて大きいことが分かった。さらにその減衰曲線は後重合挙動とよく対応し、重合をよく説明できた。
吉井 文男; 嘉悦 勲
J.Macromol.Sci.,Part A, A13(1), p.43 - 50, 1979/00
すでに、長鎖モノマーのヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)が引込み効果によって、他のモノマーをカナル内に引入れることを報告した。この引込み効果を利用し、カナル内でのHDDAと第2成分モノマーの共モノマー組成とコポリマー組成との関係を調べた。25Cのイオンソース重合で得たコポリマー組成は、第2成分モノマーの組成がきわめて大きく、80%以上にも達した。後効果重合で得たコポリマーの組成は、インソース重合と異なり、仕込んだモノマー組織に近い。この重合反応は、カナルが崩れた後で重合するために、インソース重合では、HDDAのカナルが第2成分を引込んだカナルより安定なために第2成分のカナルだけが崩れやすくなって重合し、共重合は起こりにくい。一方、後効果重合では、温度が高いためにHDDAと第2成分のカナルが同時に崩れるために共重合反応が容易に起こる。ポリマー組成がモノマー組成に近いのは、分解前のカナル内のモノマーの配列状態が反映したと考えられる。
吉井 文男; 嘉悦 勲
Angewandte Makromolekulare Chemie, 69(989), p.1 - 13, 1978/00
被引用回数:6尿素と種々のモノマーとの包接化合物およびそれらの放射線重合(包接重合)について検討した。その結果、これまでの包接化合物よりも比較的分子鎖の長いヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)とヘキサンジオールモノアクリレート(HDMA)が25Cで、グリシジルアクリレートが0Cで包接化合物を短時間のうちにつくった。それらは低温でしか安定に存在しない。これまでの包接化合物にくらべて、室温以上でもきわめて安定である。その構造は六方晶系であった。重合速度は照射線量が増すほど、また、照射温度が高いほど大きい。ラジカルは25Cの照射でもトラップされ、それは、包接化合物の分解温度にまで昇温したときに著しく後効果重合し、これも昇温とともに逐次重合が起るこれまでの包接重合とことなり、分子鎖の長いモノマー特有の後効果重合であることが分った。重合中はカナルの結晶格子の尿素が崩れながら進行する。ポリマーはTgとIRスペクトルに溶液重合のものとに差異が認められた。
吉井 文男; 嘉悦 勲
Angewandte Makromolekulare Chemie, 69(1006), p.15 - 32, 1978/00
被引用回数:3ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)およびヘキサンジオールモノアクリレート(HDMA)が尿素と包接化合物をつくるときに引込み効果という現象、すなわちそれ自身では包接化合物を作らない比較的大きな分子でもHDDAおよびHDMAが共存すると、室温で包接化合物をつくるようになる。重合成の物質では最初の事実を見出した。その引込む割合は、HDDAの方がHDMAよりも大きく、分子サイズの小さいものほどその割合は大きくなるが、HDDAはスチレン程度であれば、等モル引込むことができる。これら引込まれた分子は放射線照射により共重合反応をし、HDDAの場合は、それ単独よりも重合率が大きく、また、引込む分子がアクリレートよりもメタクリレートの方が共重合反応しやすいことが分った。これにより、従来のようにごく限られたモノマーしか包接重合しなかったものから、より広い重合反応が可能となり、重合法としての一般性がでてきた。
嘉悦 勲
工業材料, 24(7), p.48 - 56, 1976/07
放射線重合の分野における最近の研究の動向と成果をまとめて紹介解説したものである。特に広義の特殊条件下の重合反応に重点をおいて紹介した。すなわち結晶状態、ガラス状態、吸着状態、包接状態、単分子膜、エマルジョンなど特殊な相状態における重合反応の最近の研究について紹介し、また低温・高圧など特異な条件下の重合反応の現状についても解説した。放射線重合の特徴を特異な条件下の重合反応に求めて追求する研究は、放射線重合の分野における伝統的な研究の流れの一つであり、現存および将来にわたってこの流れから、新しい有用な応用の可能性が生れるであろうことを予想し、今後の展望についても言及した。
吉井 文男; 早川 直宏; 阿部 俊彦
高分子論文集, 32(12), p.717 - 723, 1975/12
被引用回数:4広幅NMRにより尿素包接化合物中の1.3-ブタジエン(BD)の放射線後効果重合(包接重合)について検討した。得られた結果は前報のアクリロニトリル(AN)および塩化ビニル(VC)の包接重合と対比して考察した。BDは尿素と1:4のモル比で包接化合物をつくる。尿素包接化合物中のBDには、ANやVCに認められないきわめて運動しやすい成分があり、他のBDの線幅はすべての温度域でVCの場合より広い。尿素の線幅はVCのときよりも低温側から減少する。重合は-78C付近から顕著に起り、20Cでは全BDが包接化合物中で重合する。重合中はANやVCの場合と同様に包接化合物に生成した活性中心へモノマーが移動して重合する。カナルの尿素はポリマーになった周辺の尿素が崩れながら進行するANやVCの包接重合と異なり、常に尿素のカナルは保持されたまま重合が進行し、ポリブタジエン-尿素包接化合物になる。その構造は六方晶系で、a=8.21の値を得た。
吉井 文男; 阿部 俊彦; 小林 康司
高分子論文集, 32(8), p.477 - 483, 1975/08
尿素包接化合物中のアクリロニトリル(AN)のインソース重合を行い、前報の後効果重合と比較して考察した結果、次のような諸事実が明らかになった。(1)重合速度および溶液粘度はANと尿素のモル比が1:1のとき最も大きく、後効果重合の場合と同様の結果が得られた。しかしながら、溶液粘度は重合時間に対しては後効果重合とは異なった挙動を示した。(2)重合速度は線量率が小さいところではほぼ Iになるが、線量率が高くなると(210 r/hr以上)、 Iになる。(3)分子量分布は重合時間とともに広くなり、後効果重合のものより広い。Giは重合時間とともに減少するが、その値は後効果重合で得られた値よりも大きい。(4)ポリマーの立体規則性はアイソタクチック構造に富みモル比や重合時間によって変化しない。(5)-100C以下で重合したポリマーにはケテンイシンおよび環化構造が含まれており、それはその温度で重合率の増加とともに増大する。
吉井 文男; 阿部 俊彦; 早川 直宏; 田村 直幸
高分子論文集, 32(7), p.406 - 410, 1975/07
アクリロニトリル(AN)-尿素包接化合物の包接過程および後重合過程を広巾NMRにより追跡し、前報と関連づけて包接重合反応を論じた。広巾NMRの線は、バルクのANと尿素包接中のANとでは大きく異なる。包接化合物のANと尿素のモル比は、遊離のANによる線巾の狭い成分がちょうど消失するところから、1:1.2になり、AN1と尿素3のモル比では28時間で完全に包接化合物をつくることがわかった。この広中NMRで求められたモル比および包接時間は重合挙動から求められた結果と良く一致した。重合中は、重合とともにあらわれるポリマーによる巾の広いピークをモノマークの包接化合物のスペクトルから分離し、重合収率を連続的に追跡することができ、この包接重合反応を研究するのに広巾NMR法はきわめて有力な方法であることがわかった。
吉井 文男; 阿部 俊彦; 依田 修
高分子論文集, 32(7), p.399 - 405, 1975/07
尿素包接化合物中のアクリロニトリル(AN)の後効果重合の重合反応におよぼす反応条件の影響、得られたポリマーの分子量分布および包接化合物の示差熱分析ならびにX線回折について検討した。包接化合物の示差熱分析とX線回折ならびに重合挙動の結果からAN-尿素包接化合物のモル比は約1:1と推定した。重合速度は前照射線量とともに増加するが分子量(sp/c)は小さくなる。重合温度に対しては、-100C付近から顕著になり、高いほど重合速度、分子量、いずれも大きくなる。ポリマーの分子量分布はかなりせまいことがわかった。重合の開始のG値はANと尿素のモル比に対して、重合率が飽和したところではほぼ一定で、その重合収率を支配するものは分子鎖の大きさであることがわかった。
吉井 文男; 阿部 俊彦; 早川 直宏
高分子論文集, 32(7), p.429 - 432, 1975/07
尿素包接化合物中の塩化ビニル(VC)の後効果重合を行い、広巾NMRにより、包接化合物のVCと尿素のモル比および温度を変えたときならびに重合中のスペクトルの変化を観察した。得られた結果は前報のアクリロニトリル(AN)の尿素包接重合と対比して考察した。VCは尿素と1:3のモル比で包接化合物をつくることおよび重合は包接化合物中のVCスペクトルの線巾が減少しはじめる-65C付近から顕著に起ることならびに包接化温度と重合温度域がANの場合より高温側で起ることがわかった。重合の進み方はANの場合と同様であった。さらに、重合中はVCおよび尿素分子が照射していない試料よりも活発に運動していることもわかった。